366日ショートショートの旅

とりあえず引っ越しました

2012年9月のブログ記事

  • クレーン

    9月30日『クレーンの日』のショートショート 夏の朝、玄関を一歩出て息を飲んだ。 なんだ、このクレーンは! 朝の光の中、黒々とした長い影が高く高くそびえ立っているじゃないか。 数軒先にビニルシートの囲いができて、足場が組まれ何やら建築中なのは知っていた。 噂では、医療関係の研究施設だとかなんとか。... 続きをみる

  • 九月二十九日は招き猫の日

    9月29日『まねき猫の日』のショートショート お店の店先やらレジやらに招き猫ってのが置いてあります。この招き猫、アメリカでも人気があって、小判のかわりに$なんぞを抱えておるそうです。あちらでは日本の手招きはシッシッの動作なものですから、アメリカ猫の手は裏向きのカモ~ンな訳です。 「おい、招き猫って... 続きをみる

  • 妖怪パソコン小僧

    9月28日『パソコン記念日』のショートショート いやぁパソコンって楽しいねぇ。 今宵も今宵でネット三昧、深夜布団にもぐりこんで目を閉じると何やら気配が。 まさか、幽霊? 目を開いてビックリ、枕元に裸んぼの少年が正座しています。 その頭の四角いことといったらテレビのよう・・・あ、これは以前使っていた... 続きをみる

  • 車が似合う女

    9月27日『女性ドライバーの日』のショートショート キャー! ニッサンGT-R!しかも、2011年モデル『エゴイスト』じゃないの!かっちょい~い。 うんうん、リア・エンブレムを確認してうなずく。日本の技術の粋を集めた最強マシンだよな、コレ。 車体だけで1500万円くらいだっけ?この車、注文すると栃... 続きをみる

  • 真夜中の怨み節

    9月26日『ワープロの日』のショートショート 「あの・・・覚えているかしら、あたしのこと」 真夜中に電話が鳴ると、つい近親者の不幸かと慌てて電話に出てしまう。 すると、聞こえてきたのは、ゾッとするような、か細い女の声。背筋に冷たいものが走った。 聞きおぼえ?う~む、どの女だ? 「忘れてしまったのね... 続きをみる

  • 怪人カレー男

    9月25日『10円カレーの日』のショートショート 「現れいでよ!カレー男!」 シタールの響きとともにドライアイスのスモークの向こうから怪人が登場した。 インド風の衣装に身を包んでいるものの、どう見てもインド人には見えないドジョウ髭。これがジョッカーの科学力の粋を集めた怪人なのか? ジョッカーの鷹の... 続きをみる

  • 部屋掃除

    9月24日『清掃の日』のショートショート 部屋片づけには極意がある。 見えなくすることと、見えなくても取り出せることだ。 あれこれが目に見える所にあると見苦しく収拾がつかない。 目に見えない場所にしまうとスッキリするが、場所がわからなくなって探し物ばかりで効率が悪い。 つまり、あるべき場所にしまわ... 続きをみる

  • 叔父の万年筆

    9月23日『万年筆の日』のショートショート 先日、突然、叔父が亡くなった。 叔父宅に焼香を上げにうかがうと、ひとり残された叔母が喜んでくれた。 「どうしても急ぎの用で帰ることができなくて。大変でしたね、叔父さん」 叔父夫婦は五十代半ば、盆に会ったときはあんなに元気だったのに。正直、彼らみたいな夫婦... 続きをみる

  • ビーチクリーン大作戦

    9月22日『国際ビーチクリーンアップデー』のショートショート 今日はビーチクリーンアップデー!! 海岸のゴミをみんなで拾い集めるボランティアの日なんです。 ええ、ボクたち家族、全員参加します。 ママが腕によりをかけてお昼を作ってくれたんです。 子どもたちも、なんだか遠足の日みたいにキャッキャッしち... 続きをみる

  • 未来ファッション

    9月21日『ファッションショーの日』のショートショート 「試着してごらんになります?」 誘われるまま、試してみることにした。 店員が腰のリモコンを操作すると、フリスビー状の円盤が天井を飛んできた。 わたしの真上で静止、ゆっくりと回転する。わたしの全身をスキャンしているのだ。 まもなく、店の奥の試着... 続きをみる

  • 真夜中のバス

    9月20日『バスの日』のショートショート 忘年会の夜。2次会の途中で抜けて、千鳥足でバス停に向かった。 最終の11時35分のバスに間に合うように。 タクシーを使う気にはなれないほどの遠距離だ。飲み会の会場が隣町だとこれだから困る。 11時10分。思ったより早くバス停に着いた。 やれやれ。 ベンチに... 続きをみる

  • 苗字いろいろ殺人事件

    9月19日『苗字の日』のショートショート 【容疑者多すぎ殺人事件】 「駆けつけたときには、害者にまだ息があったというのか?」 「はい警部。で、尋ねたんです。誰にやられたのかって」 「で?」 「ウウウ・・・佐藤、鈴木、高橋、田中、渡辺、伊藤、山本、中村、小林、斉藤・・・」 「それ、多い苗字ランキング... 続きをみる

  • 大人になりたい

    9月18日『かいわれ大根の日』のショートショート アナ「ちんぷんかんクッキング、本日ご紹介するお料理は、『大人になりたかったよサラダ』です。本日の講師小練逍雲先生、よろしくお願いします」 逍雲「ハイ、よろしくネっと」 アナ「渋い声ですね。今日は若山弦蔵ですか?日高晤郎?」 逍雲「近藤洋介で」 アナ... 続きをみる

  • モノレール

    9月17日『モノレールの日』のショートショート 子どもの頃ってどうしてあんなにすぐに仲直りできたんだろう。 けんかして、仲直りして。またけんかして、また仲直りして。 なにがなんでもゆるせないなんて絶対ダメだと思っていたし、相手もそう思っていると心から信じていた。 数軒先の借家に住んでいた金田くんは... 続きをみる

  • マッチ売りの少女のために

    9月16日『マッチの日』のショートショート たとえばオレが大晦日に雑踏を歩いていたとしようじゃないか。 路傍のあちこちにはガチガチの雪が残っていて、冷たい風に身も心も凍てついてしまう。 そんな往来の片隅で、いたいけな少女がひとり、手提げ籠を抱きかかえ声をあげているんだ。 「マッチはいかがですか?マ... 続きをみる

  • 老人と雲丹

    9月15日『老人の日』のショートショート 「もしもし、俺だよ、俺」 「どちら様じゃ?」 「じいちゃん、俺だよ!孫の声、忘れたのか?」 「ええと、ヒロシか?」 「そうそう、ヒロシだよ。俺、事故起こしちゃって、相手に怪我させちゃって」 「お、おまえは?怪我はないのか?」 「あ、ああ、かすり傷程度、なん... 続きをみる

  • コスモス

    9月14日『コスモスの日』のショートショート 小春日和の日溜まりで、薄紅のコスモスの花が自ら光を放ち風に揺れている。 縁側には私の幼い日々のアルバムが広げたまま置かれている。先程まで母がながめていたのだ。 母が庭先でひとつ咳をした。 明日嫁いでいく私は、母親への感謝の手紙を書く筆を止めた。 「母さ... 続きをみる

  • 正義の女神

    9月13日『世界の法の日』のショートショート 都心に『正義の女神』が出現した。高層建築も膝に届かぬほど、とにかくでかい。 右手には剣、左手には天秤、目隠しをしたその姿は、正義の女神そのものだ。 のっしのっしと街を進めば、ビルは倒壊、道路は寸断。 防衛軍による砲撃も効果なし。対策本部は、女神とのコン... 続きをみる

  • 啓示

    9月12日『宇宙の日』のショートショート 夜空をふりあおぎ見上げ続けていると、 その途方もなさに心が震えてくる、 この広大な宇宙において、 137億年前のビッグバン以来誕生し消滅していった、 あらゆる恒星の総数と、 人類の祖先誕生以来、この地球上に生まれて死んでいった、 あらゆる人類の総数が一致し... 続きをみる

  • 人生とコミック雑誌

    9月11日『公衆電話の日』のショートショート ボクが勤めていた総合病院、一般外来窓口はずれの階段下に、自販機コーナーがある。 コーヒーや清涼飲料水、テレビカードの自販機と数脚の椅子があって、隅にはこじんまりと読書コーナーが設置されていた。 休憩時間に、紙コップのコーヒーを啜りながら、棚のコミック雑... 続きをみる

  • 隣、いいですか?

    9月10日『自殺予防デー』のショートショート 吊り橋の中程で往来に人気のないのを確認し、靴を脱いできっちり揃えた。 『進入禁止』の表示を無視して欄干を乗り越えると、作業用の足場に降りる。 ワイヤを握りしめ直下を見下ろすと、先日の豪雨のせいで濁流が押し寄せていた。 これなら確実だろう。 ワイヤを握っ... 続きをみる

  • 救急車

    9月9日『救急の日』のショートショート どんより曇った蒸し暑い昼下がり。 けだるい日常の空気を引き裂くサイレンの音。 そのけたたましい音に振り返ると回転灯のオレンジがギラギラ閃くのが見えた。 救急車からの見えない波に、車たちが道路傍へと寄せられていく。 張り詰めたアナウンスの声が、切迫した状況を物... 続きをみる

  • この字、読めますか?

    9月8日『国際識字デー』のショートショート 「江尸時代の曰本は、世界有数の識宇率だった。当時、英仏など充進諸圄では、読み晝きできる圄民はごく一部のエリートに限れらていのただ。これは寺小尾の効積が犬きいだのよ」 「言わんとすることろはわかんるけだど、あんがた勉強したうほいがいぞ」 「魚へんの漢字、知... 続きをみる

  • 眼鏡クリーナー

    9月7日『クリーナーの日』のショートショート 実を言うとわたし、主任のこと、憧れています。 確かに生真面目で周囲のウケはイマイチだけど、そこが魅力なんです。 とりわけ素敵なのは、主任が眼鏡を外すときの仕草なんです。 細い指先で眼鏡の端をつまんで、伏目がちに首を振って。 眼鏡を置いて、眉間に微かに皺... 続きをみる

  • 怪談黒毛和牛

    9月6日『鹿児島黒牛黒豚の日』のショートショート 三度目に越したアパートは、駅の裏路地に面した西日の疎ましい部屋だった。 モルタル二階建てのそのアパート一階には、スナックが数軒入っていた。 脇の階段をカンカン上がると五つの部屋が並び、その一番奥がボクの部屋。 駅から近いのは便利だったが、夜遅くまで... 続きをみる

  • 石炭の町

    9月5日『クリーンコールデー(石炭の日)』のショートショート うちの部落から森の掲示板へ下る坂道の右手に、繁った林の合間から広い田んぼが見渡せた。あんまり広かったので丘の上から湖を見下ろしている気分だった。 遥か向こう岸には色とりどりの屋根が連なって、その地区をみんなチロリン村と呼んでたっけ。 何... 続きをみる

  • 9月4日『櫛の日』のショートショート 子どもの頃から人魚が嫌いだった。 「人魚は体にいいのよ。頭だってよくなるし」 母さんは無理に食べさせようとしたけど、好きになんかなれなかった。 刺身はもちろん、焼き人魚も煮つけもフライも干物もダメ。母さんが台所でワタをつかみ出しているのを見て、嘔吐したことさえ... 続きをみる

  • 逆転ホームラン

    9月3日『ホームランの日』のショートショート 「打ったぁ!これは大きいぞ。グングン伸びていく!」 スタジアムがどよめく。 ボールがバットに吸いつく感触で、真芯にとらえたことを確信した。 バットを放り投げ、両手を高らかに上げる。大歓声がオレを包む。 その瞬間が人生の絶頂だった。 たいして目立つ選手で... 続きをみる

  • 惑星メランコリア

    9月2日『宝くじの日』のショートショート ここか。ここが例の奇跡の場所。 何の変哲もない駅前の宝くじ売り場。だが、三年連続1等が出て評判になった。 さすが奇跡の売り場、長蛇の列だ。早速、最後尾へ。 「あなた、がんばってね。あこがれのマイホーム、それからシステムキッチン!」 「パパ、エコカーも!」 ... 続きをみる

  • 備えアリ

    9月1日『防災の日』のショートショート 「いや~、よかった、よかった」 避難所に辿り着いてひと息、防災バッグを下ろすとペットボトルの水をグビグビグビ。 疲れきった初老の男が羨ましそうに近寄ってきた。 「少し、少しだけ分けてもらえませんか?」 男の後ろで、数名の老若男女の避難者たちがこちらに全神経を... 続きをみる