366日ショートショートの旅

とりあえず引っ越しました

2012年7月のブログ記事

  • 蓄音機

    7月31日『蓄音機の日』のショートショート 「チクオンキから、おじいちゃんの声が聞こえるんだ」 弟のシュンが急にそんなことを言い出したときは、そんな気がしてるだけなんだと思った。 それで、家族みんな、おじいちゃんの部屋に集まった。 「ここの、ラッパみたいなところに耳を当ててたら聞こえてきたんだよ」... 続きをみる

  • 悪役レスラー

    7月30日『プロレス記念日』のショートショート お父さん・・・ 隠し持っていた凶器を相手のレスラーの額に打ちつけている。 黒い覆面におおわれた悪役レスラーの目がギラギラ光っている。 マスクに隠れていても、ボクにはわかった。 一緒におふろに入ってるお父さんの、背中のホクロやキズを見まちがうはずがなか... 続きをみる

  • 今日は肉の日(729字)

    7月29日『肉の日』のショートショート ハイ、ど~いたしました? ・・・って、患者さん、アンタ顔色悪いね~。 腹痛?下痢?辛そうだぁ。嘔吐も?発熱も?食中毒だよ、ソレ。 食べたもので心当たりは?生肉? ダメだよ~この季節、生肉は。え?トイレ?ハイ、行ってらっしゃい。 ・・・(口笛で『犬のおまわりさ... 続きをみる

  • 宇宙戦争その後

    7月28日『第一次世界大戦開戦日』のショートショート 白い光に充たされた病室にドクターが入ってきた。私のカルテに目を通して微笑む。 「さすがは軍人さんだ。めざましい回復ぶりですね」 「手厚い看護のおかげです。感謝しています」 「あなたが五十年もの間昏睡していたことは、看護師からもうお聞きになりまし... 続きをみる

  • 恐怖のスイカ人間

    7月27日『スイカの日』のショートショート 「白状しろ。おまえは、ヒトとスイカの遺伝子操作によって作られたスイカ人間だな?」 「違う!おれは貴様らと同じ人間だ!」 「ではなぜ真ん丸頭、緑地に黒い縦縞なのだ?」 「こ、個性だ」 「個性的すぎるだろ。どんな仕掛けだ?」 「タネも仕掛けもない!」 「スイ... 続きをみる

  • 背筋の凍る幽霊の話

    7月26日『幽霊の日』のショートショート その晩、ボクはなかなか寝つくことができなかった。 ベッドに横たわったまま常夜灯を見つめ続ける。毛布を被っているのにゾクゾク寒気がしてたまらない。 時計が時を刻む音だけが単調に耳に響く。 妙な胸騒ぎが襲う。 こんなときに部屋の隅の暗がりを決して見てはいけない... 続きをみる

  • かき氷殺人事件

    7月25日『かき氷の日』のショートショート 害者はキッチンに倒れていた。頭部に鈍器による傷、しかし凶器が見つからない。 「容疑者の皆さん、舌を出すんだ!・・・よ~し、犯人は舌の青い郡山さん、あなただ!」 「な、何を証拠に?」 「氷の塊で殺害後、凶器をかき氷にして食べたんだ!ブルーハワイにしてな!」... 続きをみる

  • ゴルゴル13絶体絶命・後編

    7月24日『劇画の日』のショートショート 単行本150冊を超える不死身のスーパースナイパー、ゴルゴル13。彼の身に、未だかつてこんな絶体絶命の危機があったろうか。 空港ロビーを歩くゴルゴル13を偶然見つけた殺し屋が拳銃を発砲、偶然だからこそ防ぎようもなかったのだ。 いかに敏捷なゴルゴルといえども、... 続きをみる

  • LOVE米

    7月23日『米騒動の日』のショートショート 『米からちゃんと炊いて俺のために毎日おにぎりをにぎってくれ!!』 プロポーズの言葉はこれに決めていた。 ヒカリちゃんとはコンビニのバイトで知り合った。コンビニおにぎり数あれど、二人が好きなのは、アッツアツの炊きたて御飯を握ってすぐにホフホフ食べる、塩だけ... 続きをみる

  • 怪談下駄の音

    7月22日『下駄の日』のショートショート 「カランコロンなんて軽やかな音なんかじゃありませんよ、まったく。 セメントの上を引きずるような、頭蓋に響くイヤな音。 いつなんどきも歩けば必ず聞こえてくるんです。背後に寄り添うようにして。 床についても、近くを歩き回る下駄の音が耳について眠れないし。 先生... 続きをみる

  • 集合写真

    7月21日『自然公園の日』のショートショート 「ね、父さんたち旅行でもしてきたら?」 定年以来ゴロゴロしている私を見るに見かねて娘が言った。 その娘がバスや宿泊先の手配までしてくれたのでやっと重い腰をあげた。 行き先は、かねてより妻が行きたがっていた自然公園。 宿泊先も、そこからほど近い温泉郷の老... 続きをみる

  • 自己説明型Tシャツ

    7月20日『Tシャツの日』のショートショート お気に入りのバンドのライブに行った。 グッズ売り場も大賑わい。熱気と大歓声の中、メンバーがステージに登場した。 メンバー全員、Tシャツ姿。 胸にはデカデカとバンドのロゴ。 ゼットンが「ゼット~ン」と言ったり、ダダが「ダッダ~」と言ったりしてるみたいな。... 続きをみる

  • マッターホルン

    7月19日『マッターホルン登頂の日』のショートショート 機会あって、昨年の暮れ、評判の割烹料理屋で会食した。 店長は某テレビ局で料理コーナーを担当するほどの有名な料理人で、朴訥な人柄でファンも多かった。 旬の食材を使って手間隙惜しまず仕込んだ料理の数々は、なるほど評判だけのことはある。 十二分に堪... 続きをみる

  • ジムノペディ

    7月18日『光化学スモッグの日』のショートショート 錆び朽ちたフェンスにもたれて待っていた。 ジェット機が西へ翔けていく。工場のサイレンと爆音が混じり合い夕暮れ空に轟く。 栄養ドリンクを注いだコップ越しみたいな、おぞましい空の色。 遠く鉄塔から風が吹いてきて、草原を波立たせてわたしに迫り、そしてわ... 続きをみる

  • 東京みやげ

    7月17日『東京の日』のショートショート お父ちゃんが単身赴任から帰ってきた。 長いこと東京で仕事をしてはったんや。お疲れさま、お父ちゃん。 「え?何これ。東京みやげ? ボクに? わあ、うれしいなぁ。なんやろうなぁ。 それにしても長細い箱やなぁ。振ってみてもええ?なんやゴトゴトゆうとるで。 プラモ... 続きをみる

  • 惜しいっ

    7月16日『閻魔賽日』のショートショート 押井アタラ15歳の春。 「押井君・・・あなた、本当に惜しかったのよ」 中学校の相談室で担任の先生が悲しい顔で言う。 「エッ・・・僕、公立高、不合格なんですか?」 「ええ・・・不合格だったの。とっても残念なのは、学力検査と内申をひっくるめた総合点、合格のボー... 続きをみる

  • ファミ婚

    7月15日『ファミコンの日』のショートショート アキラ君ちに遊びに行って、借りていたファミコンのカセットを返した。 「あれ?ロックマンは?」 しまった。ロックマン、差しっぱなしにしてた。 「いいよ今度で。そのかわり、桃鉄貸しといて」 アキラ君はやさしい。アキラ君は五つ年上で中学生で、その頃のボクに... 続きをみる

  • ひまわり

    7月14日『ひまわりの日』のショートショート 「あ、久しぶり。日向子、ちゃん、だよね?あの、ボク、覚えてる?高校ンときの。 ・・・そうそう。覚えててくれたんだ。 元気にしてた?・・・そりゃよかった。・・・ああ、元気だよ。 あれから連絡しなくてゴメン。いろいろ忙しくって。 でさ、今さらなんだけど、今... 続きをみる

  • 霊気、感じます?

    7月13日『オカルトの日』のショートショート 厚い雲が低く垂れ込めた空の下、高層集合住宅が重苦しく並んでいる。 そのうちの一棟の一室に霊能力者は招き入れられた。 白装束に大きな数珠を首に下げている修験者とその弟子の若者である。 その部屋は老夫婦の二人暮らし。婦人が霊能力者をリビングへと連れて行く。... 続きをみる

  • 通知表

    7月12日『人間ドックの日』のショートショート ダイニングのテーブル。向かい側に座ったママがじっと白い紙を見つめている。 無言・・・ 日頃意識したこともない掛け時計の秒針のコチコチがハッキリ聞こえる。息が苦しいくらいの緊張。いつもの一家団欒は今日のここにはない。 ママが紙から視線を僕の顔に移す。僕... 続きをみる

  • 70億のリアリティー

    7月11日『世界人口デー』のショートショート しょの1 「世界人口、70億人だってさ」 「70億?数が多すぎてまったくイメージできないなぁ」 「よく犯罪ドラマに出てくるジュラルミンケース。あれひとつに万札詰め込むと1億4千万。つまりジュラルミンケース50個分だ」 「ここで『なるほどぉ』なんて言うの... 続きをみる

  • ロボ納豆

    7月10日『納豆の日』のショートショート 「ゴ主人様、ナンナリトオ命ジクダサイ」 「ふむ、今日はおまえに納豆を作ってもらいたい。納豆は納豆でも、魯山人納豆だ。頼むぞ」 「オ安イ御用デゴザイマス」 近未来。いろいろ技術が進歩して便利になったが、なんといっても家事ロボットには重宝している。 私が指図す... 続きをみる

  • 自殺願望

    7月9日『ジェットコースターの日』のショートショート 死にたい。 ケリをつけてしまいたい。 33階に到着、エレベーターを降りる。 ルームキーでドアを開け、部屋に入ると室内を見渡す。金属フレームの椅子が目に入る。これにしよう。 ガラス窓に向かってそれを放り投げる。ガラスが砕け、椅子が外に消える。 冷... 続きをみる

  • ナンパ野郎!

    7月8日『ナンパの日』のショートショート 「ねぇねぇ彼女ぉ~お茶しな~い?」 ゲッ・・・チャラい。しかも思いっきり見覚えが。 「アンタ、あたしが整形する前にも声かけたよね」 「ワォ!くりびつ~」 「さらに整形前時点ですでに間違ってるよね?」 「すでに?」 「忘れたのかい、オマエ」 「ゲッ・・・母さ... 続きをみる

  • 七夕の夜に

    7月7日『七夕』のショートショート 星間連絡船『カササギ』はアルタイルへの帰途についていた。 星間トンネルは、16光年離れたヴェガとの間をわずか45分でつないでいる。 ただしトンネルが使えるのは一年に一度、7月7日の夜だけだ。 船内。二人のアルタイル人が虚ろな目で話をしていた。 「なあ、俺たちゃ若... 続きをみる

  • サラダ記念日

    7月6日『サラダ記念日』のショートショート 「この味がいいね」と君が言ったから7月6日はサラダ記念日 食卓には山盛りの野菜サラダ。そして市販のドレッシングの瓶。 ドレッシングの名前は、思いっきり『サラダ記念日』。 「おい、それで今日は野菜サラダをこんなに食わせる気か?」 「7月6日はサラダ記念日な... 続きをみる

  • ビキニワールドへようこそ

    7月5日『ビキニスタイルの日』のショートショート ネットオークションで、ついにiPotを手に入れた。 届いてみて愕然。しまった。なるほどiPadでもiPoneでもiPodでもない。 ハクション大魔王みたいな古びたツボに、例のリンゴマーク。確かにiPotだ。 軽く触れるとブォン!ツボの表面に人が現れ... 続きをみる

  • ナシ五連

    7月4日『梨の日』のショートショート 「キミキミィ、社会人なんだからもっと丁寧な言葉づかいを覚えなきゃなぁ。このリンゴはなんと言えばいい?」 「おリンゴですか」 「そう。じゃミカンは?」 「おミカンですね」 「そうそう。わかっとるじゃないか。じゃ、ナシは?」 「アリマセンです」 「ウマイ!」 思い... 続きをみる

  • マツおばあちゃんのあの頃

    7月3日『波の日』のショートショート モルタルアパートに挟まれた小さな児童公園のブランコに、老婆が腰掛けていた。 夏の終わりの午後、先程まで砂遊びをしていた兄弟も姿が見えない。 ブランコを揺らすとキィ、キィとかすかに軋む音がした。 「おばあちゃん」 顔を上げると、目の前に男の子が立っていた。 賢一... 続きをみる

  • 亀の子たわし

    7月2日『たわしの日』のショートショート 都会でのひとり暮らし、掃除とか大変だろうって聞かれるけど、お掃除ロボが全部やっている。 以前は、ルンバみたいなのが主流だったが、今じゃ『亀の子たわし』だ。昔ながらのたわしじゃない。たわしが亀みたいにのそのそ歩き回ってゴシゴシお掃除をしてくれるロボット。埃ば... 続きをみる

  • 音声認識型金庫錠

    7月1日『銀行の日』のショートショート 近所のビル地下室からガッシガッシと掘り進んで、苦節3年、ついに銀行の地下金庫室まで開通した。 深夜、コンクリートの壁を打ち砕いて降り立ったこの場所は、大黒屋銀行本店、地下金庫室前フロア。 え?金庫の中に開通しといたら、金庫錠を開ける手間が省けるんじゃないかっ... 続きをみる